経営の戯言

経営に関する戯言をつらつらと

何故、東北地方から次世代を担う経営者が出てこないのか?に対する解

かつて、私は年間で50を超える日程を日本全国各地で過ごした。いわゆる出張組からすれば大した出張数でも無いだろうが、月に4回近くの出張となれば私にとっては結構な大事であり、楽しい日々だった。出張では多くの経営者や起業家とお会いすることが殆どであり、真摯気鋭のスタートアップの経営陣や、地元に根を下ろした中小企業の2代目・3代目など、さまざまな経営者がいた。ほとんど後者だが。全国を回り始めて数年経った頃、ふと一定の法則があることに気づくのだ。

「東北出身の熱を帯びた起業家がほぼ皆無ではないか?」

そうなのだ。鹿児島から北海道まで日本全国渡り歩った。仙台も福島も山形も岩手も青森もいった。秋田はすまん、いってない。その中で東北出身で次世代を担うような経営人材に一度たりとも会うことはなかった。数百、いや、恐らく数千人に経営人材に会っていると思う。それでも、東北出身で次世代を担うような、またはそれを想起させてくれる人材に一切出会えていないのだ。


実際に調べてみると、上場企業の創業者、及び現経営者でも東北出身者は数えるほどしかいないではないか。更に調べるうちにわかったのはほとんどの起業家は西から排出されているのだ。孫正義三木谷浩史藤田晋稲盛和夫本田宗一郎豊田喜一郎坂本龍馬、めんどくさいからこのくらいにするけど、日本を代表する経営者はほとんどが西から排出されている。これは一体何故なのか?ここまで偏るには何かしら理由があるのではないか?と疑うのが普通だろう。

ここからは私の仮説になるので話半分で読み飛ばしてほしい。


地理的、歴史的背景が影響しているのではないか?
西の代表格といえば福岡、大阪だろう。特に福岡は起業家の宝庫だ。ではなぜ、福岡と大阪には沢山の起業家が生まれるのか?答えは地理と歴史にある。多少なり日本史に興味がある人は既に察したかも知れないが、日本の歴史は常に西から動いているのだ。その際に発生した大きな戦もほとんどが西から始まっている。戦には莫大な金がいる。それをどこで調達するのかといえば、海を跨いだ貿易に他ならない。世界中見回しても、まず栄えるのは貿易が盛んな海に面した港町からだ。(※昨今では飛行機やテクノロジーのおかげで必ずしもそうではなくなった。)

つまり、西の人々は常に商機があり、変わり続けることが即ち生き残ることだとDNAレベルで理解している可能性が高い。所謂、根っからの狩猟民族なのだ。西の人々に現状維持バイアスは働きにくいのだ。


それに対し、東北で歴史上起きた大きな出来事を上げろと言われると戊辰戦争くらいではないか?有名な武将を上げろと言われたら伊達政宗以外に何を挙げられるか?では、真田丸が始まる前に伊達政宗は何をした人か明確に答えられる人がどれほどいるか?更に少し過去を遡ってみた場合、奥州藤原氏以外に誰がいるだろう?いないのだ、いないのだよ、有名な武将も。起きてないのだ、有名な戦など。つまり、争い自体が稀であり、争うことの必要性に駆られなかった民族、それが東北人なのだ。東北人は変わる必要性に晒される機会が無かった。だからDNAレベルにそれが刷り込まれた根っからの農耕民族といえる。つまり、現状維持バイアスが遺伝子レベルで働きやすい人々なのだ。

つまり、私が言いたいのは生まれ育った地域レベルで起業家に適した風土や環境があるのではないかということなのだ。更にそれは現在進行形なのだ。

これを裏付けるように、日本の歴代総理大臣の出身地を見てみるといい。最多が山口県である。これは今の日本を作った長州藩の流れだ。それだけじゃない。今の日本を動かしている政治家や起業家の殆どは西から排出されている。未だにこの国はこういったバイアスが残っている。(別に悪いと言ってるわけじゃない)

 

ただし、東北地方が絶望的かというとそうではないだろう。それは2011.03.11の未曾有の大震災だ。誤解を恐れずに言えば、大災害があった地域から次世代のリーダーは生まれる。楽天三木谷浩史氏、gumiの国光宏尚氏、彼らは阪神大震災の経験が今の自分を作っていると公言している。他にも無意識レベルでそういった経験が引き金になり、起業している起業家も少なくないはずだ。それらを踏まえれば、次世代を担う起業家は次は必ず東北地方から出てくるはずだ。その筆頭が福島県出身のメタップスの佐藤航陽氏だろう。佐藤氏の同世代の起業家を見回しても、佐藤氏のそれはちょっと比較にならない凄みを感じるのは私だけではないはずだ。

 

というわけでだいぶ長文になってしまったのだけど、私が言いたいのは以下に集約される。

  • 東北地方は歴史的、地理的なハンディを背負っている
  • 日本を動かしている人はほとんどが西の人
  • 次世代を担う経営者は次は東北地方から排出される

ということで、東北出身の起業家にはそろそろ焦点を当ててもいい頃だし、次世代を担う起業家が出てきてほしいと切に願う。そして私もその応援をしていきたいと思っている。